エンジニアリング統括室に異動してオンボーディングを受けてみた
2022年6月からエンジニアリング統括室に配属となりましたハヂメです。5月いっぱいまでCX事業本部で比較的IT技術寄りの業務に携わっていましたが、今月からは全く毛色の異なる業務をやっていくことになりました。
ある部署に新たに配属されたメンバーがすぐに自分の力で働き始められるよう、育成の目的でオンボーディングの期間を設けたいと考えている人も多いかと思います。本稿では、エンジニアリング統括室(以下、社内での呼称である「エンカツ」と記します)に異動してきた筆者自身が実際に受けたエンカツのオンボーディングの内容、良いと思ったところ、そしてこの先もっと良くしていけそうだと思ったところを書いていこうと思います。
エンカツのオンボーディングはどんな内容だったか
エンカツのオンボーディングで扱われた内容を、以下に列挙します。
- 導入
- オンボーディングの目的、ゴール、アウトラインについての説明です。
- ツール設定
- 業務で用いるSaaSについての説明です。
- エンカツの理念
- MVVBマトリクスを用いた、部門の理念の説明です。
- 関係者
- 一緒に働くことになる部門内/他部門のメンバーの紹介です。
- プロジェクト
- これまでに取り組んできたプロジェクトについての説明です。
- 仕事の進め方
- スクラムの進め方や部門内でまとめている用語集についての説明です。
- 基礎知識
- 業務を進める上で必要になる知識が資料にまとめられており、自習できるようになっています。
- アライアンスオンボーディング
- エンカツで自分が目指す方向性について考えます。
- 現状把握
- エンカツで現在取り組んでいる内容についての説明です。
- オンボーディングのふりかえり
- エンカツのメンバーで今回のオンボーディングをふりかえります。
エンカツのオンボーディングの良かったところ
エンカツのオンボーディングには、良いところがたくさんありました。ふりかえりで筆者が挙げた内容をご紹介します。
- どんなこともよく文書化されている
- 早い段階からミーティング等で発言の機会がある
- チーム内コミュニケーションの機会を必要に応じて設けてもらえる
- アライアンスオンボーディングが面白かった
- もっと知りたい内容をすぐ資料にまとめてもらえた
どんなこともよく文書化されている
エンカツでは多くの業務知識が文書化されており、オンボーディングもほぼその資料を見ながら行うことになります。多くの内容はNotionに残されています。今回のオンボーディングの内容も、Notionに全てまとめられています。日々の業務において知識伝達をするときも、大抵その場で書き残しながら行っています。こういった用途のドキュメント作成は、日々の業務に組み込んでしまうのが良さそうだなと思いました。ほとんどの場合、ドキュメント執筆だけに使えるような時間は、業務に追われていつまで経っても確保できないためです。
早い段階からミーティング等で発言の機会がある
オンボーディングそのものの話とはまた別ですが、まだ業務に対する理解が追いついていない段階でのミーティングであっても、ただ内容を聞いているだけでなく、発言できる機会があります。既存メンバーによるフォローが十分に整っているという条件付きではありますが、キャリアや経験の多寡にかかわらず、業務の中で自分の意見を表明する機会はあった方が良いだろうと思います。自分の考えを常に持っていなければならないという立場に置かれることで、早いうちから業務の課題を自分ごととして捉えるようになり、業務に対する理解も深まります。
チーム内コミュニケーションの機会を必要に応じて設けてもらえる
1on1、ペアワーク/モブワーク、オフラインで集まる機会など、チーム内のコミュニケーションを推進するイベントを設けてもらえました。慣れない業務でも、ペアワーク等で一度一緒に手順をなぞってもらえるだけで、理解度が格段に違います。
また、メンバー全員がオフィスに集まって、部門の今後の方針について話し合う機会を設けていただきました。日々の業務ではリモートワークが普通のことになっていて、ミーティング以外で顔を合わせることはほとんどありません。しかし直接会ってみると、メンバーの人となりが一段とよくわかります。また、隣の席に座って業務についてラフに話せるというのも久々の体験でした。こういった機会が意外と相互理解を促進しているのかもしれません。対話の比重の多い業務では、こうしてたまに直接会う機会を作るのも良さそうだと思いました。
アライアンスオンボーディングが面白かった
「異動直後の3か月、そして1年後に向けてどこを目指すか」を考えるためのオンボーディングのことを、エンカツではアライアンスオンボーディングと呼んでいます。アライアンスオンボーディングでは、まず以下のことを整理します。
- 自分が何をやっていきたいか
- 自分は何をするのが得意か
以上の内容から、自分の目指す先を考えていきます。
アライアンスオンボーディングで面白いと思ったのは、自分について考えるときに、まずこれまでの生い立ちから振り返るというところです。簡易的な自分史のような感じで資料をまとめていくと、人生の岐路に立ったとき、どういう考えで今に至る道を選んだのかということが何となく見えてきます。「こういうことが自分には合っていそうだな」という進路を、経緯はともあれ、どこかで選んでここまで来ているわけです。そういうところから、自分のやりたいことや、強みがわかってきます。このプロセスは、実際にやってみると、自分自身についてのことながら非常に面白いです。
やりたいことや強みが見えてくると、この先の仕事で、どういうことを任されて、その使命を果たせたら、自分や相手の満足度が高いのかということもわかってきます。今まで自分は、単純に身につけてきたスキルの面からエンジニアという職を選んできたつもりでいました。しかし、元を辿ると自分は、言語(自然言語/人工言語)で何かを表現することや物事の形式を整えることが好きで得意だったということを思い出しました。エンカツに異動してきてからの1か月間、言語で何かを表現するという部分で仕事に関われることがあり、それによって大きな充実感が得られました。
また、エンカツという場を通じてどういうキャリアを歩んでいくのかを示すロードマップがエンカツのメンバーによってあらかじめまとめられており、自分が具体的にどういう役割を果たしていけるとよいのかをイメージしやすくなっています。これによって、自分一人で思い描いていたキャリア像が意外と狭いものであったことがよくわかりました。
もっと知りたい内容をすぐ資料にまとめてもらえた
エンカツという部門については以前からいろいろと話を聞いていましたし、オンボーディングでも個別のプロジェクトについての説明は受けていました。しかし、部門の全体像として、どういう問題関心のもとに業務を進めていこうとしているのかがあまりよく掴めませんでした。そのことについて相談したところ、部門の業務の全体像について新たに資料をまとめていただけました。これを参照することで、エンカツが組織の課題に対してどのようにアプローチしようとしているのかについての理解が深まりました。
エンカツのオンボーディングで今後もっと良くしていけそうなところ
オンボーディングが終わった後にメンバーでふりかえりを行い、今後もっと良くしていけそうなところを考えました。筆者が話題に出したのは、以下の2点です。
- 取り組んでいるプロジェクトの経緯がわからない
- 基礎知識のコンテンツ量が多い
取り組んでいるプロジェクトの経緯がわからない
特定のプロジェクトの背景や向き合っている課題、解決策、その解決策を選択した根拠等が、何らかのドキュメントに明記されていると良さそうだと思いました。オンボーディングが済んだ時点では、業務における様々な判断をある程度自力で行えるようになっていることが望ましいです。これまでにプロジェクトの中でどういう判断が行われてきたのか、その判断材料が何だったのかを把握できていないと、それ以降の意思決定は困難なものになります。折々の判断の根拠がチーム内で共有されていなければ、既存メンバーであってもそういうことは起こり得ますし、途中からジョインしたメンバーであれば尚更でしょう。また、なぜこの課題に取り組んでいるのか、どこに取り組む意義があるのかについて納得できていることで、自分が業務を進める際のモチベーションになります。
ちなみにエンカツでは、ODDRという形式で意思決定プロセスを記録しています。ODDRの詳細については、リンク先の記事を参照してください。業務設計等で何らかの判断を下す際に、決定された内容だけが共有されるのではなく、なぜこのような判断をしたのか、複数の方法がある中でなぜこの方法を選択したのかといった内容が共有されるようになっています。このフレームワークは、今後さらに活かせるような感じがします。こういった意思決定プロセスがプロジェクト単位で細かく記述され、参照しやすくなっているとより良い形になりそうです。
基礎知識のコンテンツ量が多い
オンボーディングの期間は限られていますが、全く業務内容の異なる部署からの異動ということもあり、学ばなくてはならない内容は結構多いです。初めて触れる概念がいくつもあります。エンジニアの例で言えば、ウェブ開発を全く知らない人がその概要を一から学ぶようなものだと思います。ある程度まとまった時間を費やすことにはなるでしょう。しかし、どこから手をつけたらいいのか、いつまでに全てをこなせばいいのか、自分で見当をつけながら計画を立てるのはなかなか難しいことです。
こういった場合に、業務に必要な知識について自分で学習する場合の優先順位が明確になっていると、より取り組みやすそうだと思いました。差し当たり目の前の業務をこなすのに必要な知識があれば、走り出すことはできます。すぐに必要になりそうな知識が取捨選択されていて、基礎知識を学習するときの優先順位が定められていれば、時間を上手に使って習熟できそうです。
まとめ
エンカツに異動してきて受けたオンボーディングの内容と、良かったところ、そして今後の改善について書いてみました。リモートワークの機会が多くなったこともあり、知識伝達やコミュニケーションに課題を感じている方も多いのではないかと思います。新しい仲間が序盤から爆速で走り出せるように準備して、最強のチーム・最強の組織を作っていきましょう!